緑風渚の引き出し

若干ひねくれた大学生が22年の人生の中で思いついたことを書き残してます。

N高の光と影—積極的進学と消極的進学—

 N高の快進撃がすごい。出版大手のKADOKAWAとIT企業のドワンゴが運営するネット中心の通信制高校だ。生徒数は2万6000人以上の日本最大規模の高校らしい。

 「好きなことを好きなだけ 個性を伸ばす異色の教育」カンブリア宮殿でのサブタイトルだ。とても理想的だ。進学実績も着実に出てきており、東大など難関大やマンチェスター大学など海外大への合格実績が出ている。紀平梨花などトップスポーツ選手も通っていたようだ。

 ただ、N高のこうした素晴らしい面は光の面に過ぎず、影の面があると思われる。

 「これがやりたい!」という積極的理由があればいいと思う。映像に出ていたように、プログラミングや投資など、N高の強みを存分に生かしている。

 一方、学習支援の現場では、やりたいことが明確でないままN校への進学を選択する中学生もいる。”普通”の高校に通いたくない、通えない中学生が消極的理由から選択しているように感じる。通学なしのネットコースであれば授業料も年5~10万で、経済的にも優しい。ただ、学校に通いたくない理由は、人間関係や学習の遅れであることが多い。この場合は、高校進学後も保護者などのフォローが必要なケースが多いと思われるが、そうした教育的フォローができる(余裕のある)親ばかりではない。自主的・自発的に勉強したり、コミュニティに属する必要があるため、N高だけで他のフォローがなければ社会的に孤立する可能性がある。

 カンブリア宮殿を見ていると、やはり拠点校に通えるかどうかはリアルの人間関係の機会の量に差が出ると感じた。もちろん、高校だけがリアルな人間関係を学ぶ場(社会)だとは思わないが、ネットだけになればリアルの人間関係の苦手意識は強まるばかりではないかと思う。ネットでもコミュニティ機能はあると思われる。

 本人の意思を尊重して、N高への進学を支援したが、その後彼女がどうなったかはわからない。7月頃は学習支援の場に顔を出してくれたが、その後の様子は知らない。「本人の意思を尊重する」というと聞こえはいいが、「無責任」と紙一重に感じる。2万6000人のうち、自主的・自発的に動けている生徒はどのぐらいいるのか、無責任な進学によって社会的に不利な立場にならないか注視する必要がある。