もう彼は自分のことを愛おしいと思っていないんだ。
LINEで「別れたい」と言われた。もう3度目だ。さすがに向こうもこちらも限界である。でもLINEだけで別れるほど、浅い関係じゃなかったと思う。だから最後に会いたいと伝えた。向こうはめんどくさいと思っているだろうけど、荷物取りに行くからと行ったら、納得してくれた。多分。
最後に彼に会いに行く。パジャマも下着も置いていた彼の部屋に。
インターホンを押してから、しばらくしてドアが開いた。彼から紙袋を手渡された。私の荷物は紙袋にまとめて入れてあった。思い出が染み付いたものしか入ってない紙袋だった。
「これで全部だと思うから。じゃあな。」
彼にはあっさり言われる。
何度も考えた台詞を、できるだけ、できるだけ軽く、でも伝えたいことを伝えられるように、彼の顔を見ながら言った。
「大好きだったし、愛してたよ。今までありがとう。」
紙袋を受け取って、できるだけドライに振る舞って、彼の部屋の扉を閉めた。
最後に強がってしまった。
泣きたくないのに、エレベーターに辿り着く前に、涙が零れそうだった。