緑風渚の引き出し

若干ひねくれた大学生が22年の人生の中で思いついたことを書き残してます。

JC「だって無理じゃん」

 週一回の学習支援ボランティアに参加している。冬休みの宿題を前になんのためらいもなく答えを写しているJC達を目にする。精神年齢の高そうな、陰で陰キャ男子大学生の悪口を言っていそうな、生意気そうなJCだ(すべて決めつけかもしれない)。

 勇気を出して「大丈夫?」と話しかける。半年以上ボランティアを続けているが、未だに最初の声のかけ方がわからない。

 JC「あ、大丈夫です」軽くあしらわれる。

 I 「答え写しても勉強にならないよ」

 JC「〜。だって無理じゃん」

え? 

 JC「わかんないから答え写してんじゃん」

確かにそうだ。宿題を出そうとする気持ちがあるだけマシか。いや、でも、わからないことをわかるようになるのが勉強じゃん。どう伝えれば…。

 JC「勉強して何になるの?」 

グサッ。それは俺もよくわかってないんだよ…。う〜ん…。

 I 「いろんなことを知ったり、わかったりすると面白いじゃん」

 JC「でも、知らなくていいこともあるよね」

うん、その通り。知ったところで幸せになれるわけじゃないし。知らなきゃ損。知らぬが仏。どちらもあるのがこの世の中。上を知らなければ満足できるのに、上を知るから満足できなくなる。妥協点を探すのに苦労する。

 かける言葉がわからなくなる。

 勉強を教えに来たはずなのに、気がつくとこちらが考え込んでしまった。

 「いい高校行くためじゃない?」

 「いい高校なんて行けないし。アタシ、馬鹿だから。」

 「勉強したら馬鹿じゃなくなる。あと一年もあるじゃん」

 「は? 一年しかないじゃん。っていうかいい高校行ってどうすんの?」

 「それはいい高校行って、いい大学行って…。あれ? いい企業行って…。あれ?」

 あれ? わからなくなってきた。自分にとってはこれが最善だと思ってる(思い込んでる、思い込みたい)が、彼女にとってそうではないのか?

 まずい。方向を変えよう。こちらから質問しよう、

「ちなみに、行きたい高校は?」「ない」

「趣味は?」「ない」

「部活は?」「入ってない。習い事は習字してる」

「将来したいことは?」「ない」

「楽しいときは?」「友達と話してるとき」

「勉強は?」「嫌い」

 あれ? 話しながらだんだん「なぜ?」「どうして?」「なんのために?」と考えることが、辛くなってきた。ずっと「なぜ」「どうして」を考えてたら幸せになれない気がしてきた。多分この子はそんなこと考えてないし、考えたくもないかもしれない。考えたってなんにもならない。その通りかもしれない。理屈っぽく考える自分が面倒くさい奴に見えてきた。アイラインの引かれたJCの目を見ながら惨めになってきた。もう考えるのはやめよう…。

 そのあとは他愛もない話をした。今まで全く話せなかった(一方的に私が怖がっていた)JCの一人と何とか会話できたので、ひとまず良しとする。

(これはフィクションです)