緑風渚の引き出し

若干ひねくれた大学生が22年の人生の中で思いついたことを書き残してます。

超短編「愛の終わりの紙袋」

 もう彼は自分のことを愛おしいと思っていないんだ。

 

 LINEで「別れたい」と言われた。もう3度目だ。さすがに向こうもこちらも限界である。でもLINEだけで別れるほど、浅い関係じゃなかったと思う。だから最後に会いたいと伝えた。向こうはめんどくさいと思っているだろうけど、荷物取りに行くからと行ったら、納得してくれた。多分。

 

 最後に彼に会いに行く。パジャマも下着も置いていた彼の部屋に。

 インターホンを押してから、しばらくしてドアが開いた。彼から紙袋を手渡された。私の荷物は紙袋にまとめて入れてあった。思い出が染み付いたものしか入ってない紙袋だった。

 「これで全部だと思うから。じゃあな。」

 彼にはあっさり言われる。

 何度も考えた台詞を、できるだけ、できるだけ軽く、でも伝えたいことを伝えられるように、彼の顔を見ながら言った。

 「大好きだったし、愛してたよ。今までありがとう。」

 紙袋を受け取って、できるだけドライに振る舞って、彼の部屋の扉を閉めた。

 最後に強がってしまった。

 泣きたくないのに、エレベーターに辿り着く前に、涙が零れそうだった。