緑風渚の引き出し

若干ひねくれた大学生が22年の人生の中で思いついたことを書き残してます。

東進新宿エルタワー校のトイレ

 最近ふと思い出すことがある。受験生の頃、東大特進で林修の授業を受けるためだけに新宿エルタワー校に通っていた。2週間に一回、水曜日の放課後、友人と待合室(自習室)で会って、最前列の真ん中の席で授業を受けていた。

 そのときのトイレがなぜか印象的なのだ。12階からは新宿の夜景が見えて、下には何車線もある道路があって、オレンジ色の薄暗い照明のトイレだった。すれ違うのはみんな東大志望で、もれなく頭が良さそう。みんな本気で東大を目指してる。けれど受かるのは3人に1人。

 そんな中、林修の授業を受ける高揚感、過去問を解いて採点される緊張感、東大志望であることを実感する優越感、こんなことやってるけど多分受からないんだろうなと思う諦観がごちゃまぜになりながら、私は受験勉強の中のたまの非日常を味わっていた。東大受験は残酷で、データがありすぎるため、自分が落ちる確率が限りなく高いことを高3の夏頃に気づかされるのだ。通っていた高校の環境もあるだろうが、負け戦だと分かっていながら、自分を鼓舞して、少しでも受かる確率を上げるために勉強し、自分を騙しながら、東大を目指し続けた。トップを目指している感覚は気持ちよかった。楽しかった。でも、いつか終わる、2月26日で終わる、ともわかっていた。そんな狭間で生きていた自分の心理状態があの空間に詰まっていたのかもしれない。誇りと諦観の混ざった感情とともに。